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冬の間にやっておきたい畑の環境整備3選【畑は小さな大自然vol.108】

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畑の環境整備って何?

畑の環境整備とは

畑の環境整備とは、畑の周囲や土壌の空気と水の流れを整える手入れのことです。全ての生き物にとって必要な、空気と水の循環という畑の生命線や大動脈とも言えるこの流れを整えておくことで、野菜や野菜と相性の良い微生物、雑草、虫が生息しやすい環境になります。

その土地にどんな生態系が繁栄するかは、その土地の環境により大きく左右されますので、特に生態系の仕組みを利用するような有機農法・自然農法にとって、環境整備はとても重要です。
うまく環境が整うと、僕らが畑にいない時でも、日々の雨風や生き物たちの営みを味方につけることができ、常に良い循環が生まれるようになるので、必ずやっておきたい手入れになります。

環境整備をすることでどんな効果が表れる?

畑の環境整備を行うことによって主に以下のような効果が期待できます。

まず畑の環境の変化として、

● 水はけが良くなる
● 風通しが良くなる
● 湿気が少なくなる

というような変化が表れ、さらにその結果として以下のような土壌や生態系の変化も生まれやすくなると感じています。

● 病害虫の発生リスクが低くなる
● 土壌の団粒化が進みやすくなる
● 丈夫な野菜が育ちやすくなる
● 畑の周囲がヤブ化しにくくなる
● 蚊が少なくなる
● 厄介な地下茎雑草やイネ科雑草が減る

まずは基本の環境整備からやってみよう

畑の環境整備と言ってもさまざまな方法があるので、今回は僕が特に重視している手入れを3つ紹介します。農家さんにとっては当たり前にしていることもありますが、家庭菜園初心者は意外とこの3つの手入れをしていないことが多いので、ぜひやってみてほしいです。

1)畑の周囲の風通しを整える
風通しをよくする手入れ

畑の周囲のヤブになっているところを冬の間に刈っておく

畑の場所によっては周囲に竹ヤブがあったり、生け垣があったり、林があったりすると思います。そこがヤブ化していて、ツタが張っている状態の畑をよく見かけますが、ここを整えると一気に畑の風の流れや湿度が変わるのでオススメです。ただそこが自分の土地でない場合もあるので、その場合はきちんと許可をもらいましょう。

ヤブを刈ると言うと、草刈機やチェーンソーで一気に刈り取ってしまう人がいるのですが、それはオススメしていません。なぜかというと全体を一気に刈ってしまうより、適度に風が通り抜ける隙間(すきま)がある方が、ベンチュリ効果と言って風が強く抜けるようになるからです。さらに風がそこを通り抜ける際に植物が持つ水分を含むので、夏場も風が涼しく感じ、乾燥しにくい環境になります。
一気に刈ると、その分その土地全体が日当たりが良くなって、植物の再生が早くなっていくので、結果的に手間が増えることになります。なので、刈る際は人が1人通れる程度の隙間を作るように刈っていきましょう。

一度風の通り道ができると、その後も定期的にその隙間を風が通り抜けることで、勝手に古い枝やツルなどが剪定(せんてい)されていくので、手入れする手間が減ります。うちの畑の周囲もツタばかり張っていましたが、この手入れをしたことで、台風が来た時などにバッサバッサとツタや古い枝が落とされていくので、夏の間も全く手入れする必要がありませんでした。

2)畑の周囲に溝を掘る

ど手際に溝をほる

土手の際は水がたまりやすいので溝を掘ると湿気がたまりにくくなる

特に水はけの悪い畑や、周囲を壁や土手で囲まれている畑ではこの手入れが効果的です。溝を掘ることで単に水の通り道を作るというだけでなく、溝に沿って空気が動くようになるので、その流れに引っ張られるように土中の空気も動きやすくなります。
特に壁や土手のそばは、水が集まりやすく、酸欠状態になりやすいので、土中の有機物が腐敗しやすいポイントになります。ここに溝を掘ることでこの問題を解消しつつ、溝の内側の土壌にも空気が入りやすくなるのでオススメです。

畑周囲の溝掘 環境整備 家の庭

壁で囲まれている場所も周囲に溝を掘ろう

溝を掘る際はまず出口を意識します。最終的に水と空気が流れ出る場所がなければ、その途中だけを掘っても結局出て行かないので、溝が詰まってしまいます。まずは出口を定めてから、そこにつなげていくように溝を掘りましょう。
土地の水はけや土中の状態、畑の広さにもよりますが、基本的には溝の幅と深さは30センチほどを目安にするとよいかと思います。

3)縦穴を掘る

ダブルスコップで縦穴をほる

ダブルスコップだと子供でも深い穴が簡単に掘れる

水はけの悪い場所や土壌の硬いところでは、溝だけではなく縦にも穴を掘るのがオススメです。横に水を流し出すだけでなく、縦方向にも地下浸透を促します。さらにそこに炭と剪定枝を詰めていくことで、畑が乾燥している時には毛細管現象によって地下の水分を吸い上げる場所としても機能していくため、土壌の水分量・空気量が非常に安定しやすくなります。
自然界ではこの役割を樹木が根を通して行っており、根が枯れて朽ちた後にもそこが地下と地表面をつなぐパイプとして機能するのですが、それをイメージして作っています。ただ穴を掘るだけでなく炭や枝を詰めておくと、穴が埋まりにくくなるだけでなく、穴に足がはまってしまうことも避けられるため、耕さない場所ではオススメです。

縦穴を掘るのにオススメな場所は、畑の中で水がたまりやすいところや、土手や壁のそばです。縦穴を掘る時はダブルスコップ(土を挟んで持ち上げられるスコップ)やオーガー(ドリル状の機材)が掘りやすいです。オーガーは電動やエンジン式のものもありますので、土壌が硬いところはそちらがオススメです。穴の大きさは直径10〜20センチ、深さ50センチほどを目安にするとよいかと思います。

縦穴に木の枝を詰めていく

細い枝だとたくさん詰めないといけないので、太い枝から入れていくとよい

そこにまずは炭を入れていきます。木炭や竹炭などのくず炭があればベストですが、なければもみ殻くん炭でもよいです。そしてそこに木の枝を縦方向に詰めていきます。まずは直径3~4センチくらいの太めのものから詰めていき、その間に細い枝を入れていきます。さらにその隙間にも最後に炭を流し込んでいきます。穴から飛び出た枝などは危ないので全てカットします。

冬の間にやっておこう

今回のような畑の環境整備は雑草が少ない冬の間が最もやりやすいです。土を動かすのには労力も必要ですが、一度やっておくと長期間にわたって、畑にプラスの循環をもたらしてくれるので、ぜひ実践してみてください。


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