ハムシの生態と特徴
ハムシ類は、農作物や庭木に被害を与える代表的な害虫です。中でもウリハムシ、クロウリハムシ、キスジノミハムシ、ダイコンハムシ、フタスジヒメハムシ、ジュウシホシクビナガハムシ、カメノコハムシ、ヘリグロテントウノミハムシなどがよく知られています。これらのハムシは、植物の新芽や新葉、花びらを食べることで成長を妨げるだけでなく、種類によっては植物の根をも食害するため、株全体が枯れることもあります。
更に、ハムシ類は幼虫も成虫も植物を食べるため、被害が広がりやすいのが特徴です。特に大量発生した場合には、作物や庭木が枯れてしまうほど深刻な影響を及ぼすこともあります。そのため、日頃から植物の状態をこまめに観察し、早めに被害を発見して適切な駆除を行うことが大切です。
ハムシが生息している場所
ハムシ類は日本全域に生息しており、暖かい時期は農作物や庭木の葉裏などに潜んでいます。また、成虫は枯れ草や草むらのなかで越冬し、4月下旬ごろから現れます。
ハムシが発生しやすい時期
ハムシは暖かい時期を好み、4~11月にかけて活発に活動します。
虫の種類によって、発生しやすい時期が異なるので、注意しましょう。
・ウリハムシ
5~8月に発生しやすい。
・クロウリハムシ
5~8月に発生しやすい。
・キスジノミハムシ
春から秋にかけて、3~5回発生する。
特に夏に発生することが多い。
・ダイコンハムシ
9~12月に発生する。
・フタスジヒメハムシ
5~9月に発生しやすい。
・ジュウシホシクビナガハムシ
4~10月に発生しやすい。
・カメノコハムシ
6月上旬~9月に発生しやすい。
・ヘリグロテントウノミハムシ
4月下旬~8月に発生しやすい。
ハムシが発生しやすい作物を種類別に紹介
ハムシが発生しやすい作物を、ハムシの種類ごとに紹介します。
また、ハムシの特徴も分かりやすく説明します。
ウリハムシ
ウリハムシは、ウリ科の野菜に被害を与える害虫です。成虫は体長1cmほどのオレンジ色の虫で、素早く飛び回るため「ウリバエ」とも呼ばれています。一方、幼虫は白色で体長1cmほどの大きさで、土の中に生息します。
ウリハムシの成虫は、葉や果実を食害します。特に葉では直径1~2cmの丸い穴が開き、果実にも円形の傷を残します。一方、幼虫は植物の根を食べるため、生育初期の株が弱ったり枯れたりする原因となります。また、果実が地面に接している部分に幼虫が食い込むこともまれにあります。
この虫は1年に1回発生し、成虫の状態で冬を越します。春から秋にかけて成虫が活動し、幼虫は6月から8月に見られます。特にキュウリやメロンなど、ウリ科の野菜に被害を与えるため、注意が必要です。
クロウリハムシ
クロウリハムシは、体長6~7mmほどの昆虫で、全体が黒く、頭部や前胸部、腹部が黄色いのが特徴です。幼虫は終齢で体長8~9mmになり、黄白色の体に淡褐色の頭部や尾節板を持っています。
特にウリ類の害虫として知られており、中でもヘチマの花をよく食べますが、ウリハムシに比べて個体数が少なく、害虫としての影響はやや軽いとされています。
また、このハムシは成虫で地中に潜り越冬し、春になる4月から5月に活動を再開します。そして5月から7月にかけて、ウリ科植物の根の近くの地面に卵を産み付けます。
キスジノミハムシ
キスジノミハムシは、主に成虫が植物に被害を与える害虫です。成虫は黒色で背中に2本の黄色い筋があり、体長は約2mmと非常に小型です。触れるとノミのように跳ねる性質があり、名前の由来にもなっています。一方、幼虫は白色で体長8mmほどまで成長します。
キスジノミハムシの成虫は葉を食害し、1mmほどの小さな穴を多数開けます。この被害は、コナガやヨトウムシ類と間違われることがありますが、葉にイモムシやふんが見られず、跳ねる成虫が確認できる点や穴が非常に小さい点で区別できます。
このハムシは成虫で越冬し、春から秋にかけて3~5回発生します。特に夏に発生が多く、ハクサイやダイコンなどのアブラナ科野菜でよく見られます。
ダイコンハムシ
ダイコンハムシ(ダイコンサルハムシ)は、成虫も幼虫も植物に被害を与える害虫です。成虫は紺色で、まれに濃緑色のものも見られ、体長は約4mmです。幼虫は若齢のうちは淡褐色で黒い模様がありますが、成長すると濃褐色から黒色になり、体長は約7mmに達します。
このハムシが引き起こす被害は、主に葉に現れます。葉に2~5mmの穴が多数開き、特に幼苗で発生が多いと、植物が枯れてしまうこともあります。ハクサイやキャベツなどのアブラナ科野菜で被害が多く見られます。
ダイコンサルハムシの生態には特徴があり、成虫で越冬した後、春と夏は休眠状態を続け、9月から12月に活動を開始します。このため、秋に被害が集中する傾向があります。特に山際にある畑で発生しやすいので、そのような地域では注意が必要です。
フタスジヒメハムシ
フタスジヒメハムシは、主にマメ科作物に被害を与える害虫で、成虫と幼虫がそれぞれ異なる形で植物を食害します。成虫は黄色で光沢があり、背中にある2本の黒い筋模様が特徴です。
このハムシは、ダイズやインゲンマメ、アズキなどの葉や茎、さやを食害し、葉には不規則な丸い穴を多数開けます。
フタスジヒメハムシは全国に分布し、成虫は落葉や草むらの下で越冬します。5月から9月にかけて発生し、暖地では年に2回、寒冷地では1回発生します。
ジュウシホシクビナガハムシ
ジュウシホシクビナガハムシは、成虫は体長約6mmほどで、赤褐色の背面に黒い斑点が多数あるのが特徴です。本州と九州に分布し、元々は山野に自生するキジカクシという雑草を食べていました。しかし、近年では食用アスパラガスの栽培が広まったことで、畑に降りて食害するようになったといわれています。
このハムシは年に1回発生します。3月頃に孵化した幼虫はアスパラガスの新芽を食害しながら成長し、土中で蛹化して6月には新成虫となります。成虫で越冬し、春先に再び活動を始めます。アスパラガスの被害は、主にこの春先の成虫によるものが中心です。被害が大きくなると商品価値を失ってしまうので、厄介な害虫として知られています。
カメノコハムシ
カメノコハムシは日本国内では北海道から九州まで全国に分布しています。成虫は体長約8mmで楕円形をしており、背面は灰緑から黄褐色、腹面は黒色、脚は黄褐色という特徴的な姿をしています。
このハムシは年に2回発生し、成虫と幼虫の両方がアカザ科植物の葉を食害します。農業では特にテンサイが被害を受けることが多いです。
ヘリグロテントウノミハムシ
ヘリグロテントウノミハムシは、ヒイラギやヒイラギモクセイ、キンモクセイ、ギンモクセイなどに被害を与える害虫です。テントウムシに似た見た目をしていますが、テントウムシが益虫であるのに対し、ヘリグロテントウノミハムシは害虫です。
成虫は体長3~4mmで、黒い体に赤い円状の模様があり、ヒメアカホシテントウに似た見た目をしています。触れるとノミのように跳ねて逃げるのが特徴です。幼虫は体長7mmほどで、黄色く丸々とした蛆(ウジ)虫のような姿をしています。
被害は幼虫によるものが特に深刻で、葉の薄皮に潜り込み、内部から食害します。大量発生すると樹木全体が枯れたような状態になり、景観や植物の健康に大きな影響を及ぼします。
このハムシは土中で約1カ月を過ごし、6月中旬から下旬に羽化して成虫となり、地上に現れます。
ハムシの駆除におすすめの殺虫剤・農薬
ハムシ駆除に使うことのできる農薬を3つ紹介します。
どれも効果が高く、農業の現場でも使用される薬剤です。
スミチオン乳剤
スミチオン乳剤は、水で薄めて噴霧器などで吹きかけるタイプの薬剤です。
ウリハムシ・クロウリハムシ・ヨツモンカメノコハムシ防除に使うことができます。
その他のさまざまな害虫に対しても効果のある薬剤なので、防除に使いやすい薬剤です。
アディオン乳剤
アディオン乳剤も、水で薄めて噴霧器などで吹きかけるタイプの薬剤です。
ダイコンハムシ・クビナガハムシ防除に使うことができます。
優れた即効性と、残効性が特徴の薬剤です。
ダントツ水溶剤
ダントツ水溶剤は従来の薬剤に抵抗を獲得した害虫にも効果がある、防除効果の高い薬剤です。
ウリハムシ・フタスジヒメハムシ・ジュウシホシクビナガハムシ・カメノコハムシなどさまざまなハムシ類の防除に使うことができます。
殺虫剤や農薬を使わずにハムシを駆除する方法
ハムシは触るとすぐに落ちて逃げてしまうので、すぐに手で捕まえてしまいましょう。
ウリハムシをはじめとして、土中で幼虫に育つ虫もいるので、中耕するときに土をよく観察してみましょう。
また、ハムシを駆除するときにオススメの方法を3つ紹介します。
ぜひ参考にしてください。
土壌表面を焼却する
マルチングをしていない場所に限りますが、農業用バーナーで土壌表面を焼いてしまうと、落ちたハムシを一気に駆除することができます。
また、雑草対策にもなるので、バーナーを使うことができる環境ではオススメです。
掃除機で吸う
こちらはマルチングをしている畑でオススメです。作物についているハムシをマルチの上に落として、掃除機で一網打尽に吸い取ってしまいましょう。
ブロワーで吹き飛ばす
掃除機で吸うのと同じく、ブロワーで吹き飛ばすのも一つの方法です。ただ、ブロワーで飛ばしただけではいずれ戻ってきてしまうことも考えられるので、あくまで予備的な方法としてご紹介します。
ハムシを抑制するために気を付けること
ハムシは繁殖力が高いので、成虫を作物に寄せ付けないこと、予防することが何より大切です。
成虫は太陽の反射光を嫌うので、作物をシルバーテープで囲ったり、マルチングをシルバーマルチにすると良いでしょう。
シルバーテープやシルバーマルチはハムシだけではなく、アブラムシやアザミウマ避けにも使えるので、ぜひ取り入れたい資材です。
まとめ
ハムシは、農作物や庭木に被害を与える代表的な害虫です。
葉や花、果実、新芽を食害するほか、種類によっては根やさやにも影響を与えるため、作物の生育不良や品質低下、最悪の場合は枯死を招くことがあります。特に幼苗期や成長初期に被害を受けると、作物への影響が大きくなります。
ハムシは小さな害虫ながら作物に大きな影響を与えるため、日頃からの観察と適切な管理が重要です。早めの対応で被害を最小限に抑え、健康な作物の栽培を心がけましょう。