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草生栽培とは? メリットやデメリット、利用できる草や取り組み事例を解説

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草生栽培とは?


草生栽培とは「作物以外の草を生やして栽培する農法」のこと。通常の栽培では、下草は虫の発生源になると考えられているため、除草剤や刈り払い機での除草が欠かせませんが、草生栽培ではあえて有用な草を生やすことで防除したい雑草の侵入を防いだり、害虫の繁殖を抑えるなどのさまざまな効果が期待できると考えられています。

草生栽培が注目されている理由

近年、消費者の食品に対する安心・安全志向の高まりや環境への配慮から農薬や肥料を使わない農法が注目を集めていますが、草生栽培もそうした農法の一つです。化成肥料や農薬、除草剤を使用する代わりに、「草」が肥料や防虫、除草の役割を担うからです。

草生栽培と清耕栽培の比較

草生栽培と対になる栽培方法に精耕栽培があります。精耕栽培は草生栽培とは逆に草を生やさない方法です。畑を耕したり除草剤を用いたりして雑草を生やさないようにする管理方法で、果樹の栄養は基本的に肥料で与えることが前提になっています。

管理に手間がかからない、虫の発生源になる可能性がある草が生えないなどのメリットがありますが、精耕栽培を続けていると土が劣化していくなどの弊害もあります。

草生栽培のメリット5選


草生栽培にはいくつかメリットがあります。
ここでは代表例として、5つ解説していきます。

敷草をすることで土壌に有機物を補給できる

一つは草を生やすことで土壌改良が期待できることです。健全な土壌には豊富な微生物が必要と考えられていますが、微生物が活発に活動するためには餌となる有機物が必要です。生やした草を刈り、土の上に敷くことで茎や葉が地上部に、根が地下部に有機物を供給します。それが微生物の餌になり微生物が増え、微生物が作物に栄養を送るという好循環が生まれるメリットがあります。

土壌改良が可能


特定の草を生やすことで機能的な効果を期待できます。例えばマメ科の草を生やすことで、作物の生育に不可欠である窒素を土壌中に固定することができます。他に例えばイネ科の草は根が地中深くまで伸びるため有機物を土壌深くまで送ることができます。根が枯れた時にはそこが水や空気の通り道になり、土壌の排水性が高まったり作土層が深くなったりする効果が期待できます。

防虫効果がある

複数種の草を生やすことによって植生に多様性が生まれ、その結果として生態系全体の多様性も増加します。これにより病害虫を捕食する生き物も現れるようになり、特定の虫の過度な発生が抑えられるなどのメリットもあります。

雨による土壌侵食を防止できる

果樹園の多くは傾斜地にあります。傾斜地では降雨によって土壌が侵食されることがありますが、実はこれは清耕栽培の場合に顕著です。というのも、土壌流出は土壌構造が破壊された土壌で起こりますが、土壌構造の破壊は土壌表面がむき出しになっていること、土壌中に腐食と呼ばれる有機物が含まれないことが主な原因だからです。裏を返せば草生栽培のように土壌表面に草を生やす、有機物を含ませることで土壌侵食が防止できます。

夏場の強い日差しから守ってくれる

果樹園は作物の生育のために日当たりは重要ですが、剥き出しの土に直接日光が当たると土壌が高温になりすぎて土壌生物が死滅したり、土壌構造が破壊されます。草生栽培であれば圃場を草で覆うことができるので、土壌に対する日差しを緩和することができるメリットがあります。

草生栽培のデメリット

一方、草生栽培にはデメリットもあります。
代表的なものを3つほど解説します。

作物と雑草で栄養や水分の吸収競合が起きる

生やしている雑草の種類や生え方によっては作物と競合してしまう可能性があります。場合によっては、本来作物に行き渡るはずの栄養や水分が吸い取られてしまうような事態も考えられるため、生育をしっかり観察する必要があります。

特に作物がまだ小さい時には雑草による生育阻害の影響が出やすいと言えます。

雑草の種類によっては害虫の温床になる

前項で草生栽培には防虫効果がある旨を解説しましたが、逆に雑草が害虫の住処になる場合もあります。例えば単一の種の草のみが繁茂していて、そこにつく虫と作物につく害虫が同じだった場合には、作物は大きな影響を受けることになります。

こうしたリスクを回避するためにも、前項で述べたような植生の多様性を高めるということは重要になります。

環境によっては作業効率が低下する

雑草を生やしておくと、場合によっては作業効率性が悪いことがあります。収穫の際に邪魔になったり、足場が悪くなったり、繰り返し草刈りに入る必要があったりする必要がある可能性があります。

草生栽培で育てられている作物の例

国内では実際に、草生栽培でさまざまな作物が育てられています。いくつか代表的な事例を紹介します。

みかん

みかんは草生栽培の代表格です。例えば緑肥として有名なヘアリーベッジというマメ科の草を生やしておく栽培方法があります。ヘアリーベッジは土壌中の窒素量を増加させる働きがあります。

ぶどう

ぶどうも草生栽培を行なっている事例があります。天狗沢ヴィンヤード(山梨県甲府市)さんでは草生栽培を通して圃場全体の生態系が豊かになることを確認する実験も行われ、実際にその効果が検証されています。

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白桃の産地である岡山県で10近いさまざまな品種の桃を育てる竹中農園さん。陽光がサンサンと降り注ぐ小高い山の斜面で、土を豊かにし、果樹の力を引き出す目的で草生栽培に取り組んでいます。園主自ら丁寧に草刈りし、その雑草が有機資源となって高品質な桃の生育に一役買っています。

>>詳細はこちら

草生栽培に利用できる草の種類

草生栽培には自然に生えてくる雑草を生かす方法もありますが、緑肥の種を蒔いてうまく機能を組み合わせるという方法もあります。ここではいくつか代表的な緑肥を紹介していきます。

レンゲ

れんげ米など、稲の栽培に活用されることも多いレンゲ。開花期頃の若い茎葉はチッソ含有量が高く分解も早いため、硫安などの無機質チッソ肥料に匹敵する即効性を示すと言われています。

カラスノエンドウ

雑草としても圃場によく生えてくる草ですが、緑肥として活用することも可能です。他のマメ科同様、土壌中の窒素分を増加させることができます。マメ科は根に根粒菌と呼ばれる菌を共生させています。根粒菌は植物の生育に欠かせない窒素を固定することができるため、マメ科が生えた土壌は窒素分が豊富になるのです。

クローバー

クローバー(シロツメクサ)もマメ科ですので窒素固定の機能があります。クローバーは土壌表面を覆うように繁殖するため、被覆作物として土壌構造を守る役割も果たします。

ペンサコラ(バヒアグラス)

イネ科の緑肥です。密度高く生えるので、有機物量を増やすのに適しています。再生力も旺盛で、牧草としても活用できます。

イタリアンライグラス

耐湿性が強いので、転換畑に適しています。早春に勢いが強いため、夏作の植え付け前の緑肥として優秀です。

ライ麦・えん麦

ライ麦やえん麦など、麦類も下草として活用することがあります。これらは乳熟期を越えたタイミングで倒伏すると、倒伏が維持されるため、グラウンドカバーとして機能します。

草生栽培における草刈りのポイント

草生栽培で草刈りは重要な要素です。
いくつかポイントをお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

高さや頻度を考える

草刈りをするからと言って必ずしも毎回表面近くで刈る必要はありません。作業性を考えて低く刈ることもあれば、イネ科の緑肥を自分の背丈になるくらいまで成長させてから倒伏させることで、有機物を増やすという方法もあります。その時の目的に応じて高さや頻度を調整します。

圃場に肥料を与えない

肥料を与えないことも、重要なポイントの一つ。草に対して肥料を与えると、過度に生育したり逆に栄養過多で本来の機能が不全に陥ることがあったり、富栄養化した雑草を求めて害虫が発生したりすることがあるので気をつけましょう。

刈り取った草はその場で敷草にする

よく圃場では刈り取った雑草を持ち出して埋めたり燃したりしますが、草生栽培では必ずその場の敷草にします。これは炭素や窒素の物質循環をその土壌で行わせる目的があります。繰り返しになりますが、敷草は土壌を撹乱から守り、土壌微生物の餌になるため、その場で敷草にするようにしましょう。

厄介者の雑草が、頼もしい味方に

本記事では草生栽培について詳しく解説してきました。一般的な農法では敵視されてしまう雑草も味方につけて果樹や作物を育てていく、そんなロマンのある農法だったのではないでしょうか。

本記事では具体的な緑肥の活用法まで踏み込んで解説しました。ぜひ読み返して頂きながら、園芸ライフの参考にしていただけたら嬉しいです。


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