桜島大根とはどんな野菜?
桜島大根は世界一大きな大根として知られる鹿児島の伝統野菜です。通常の大根が1~2kg程度なのに対し、桜島大根は平均10kg、大きいものでは20-30kgにも達し、世界一重い大根としてギネス記録にも認定されています。
形状も特徴的で、一般的な大根が細長い円筒形をしているのに対し、桜島大根は大きなカブのような丸みを帯びた形状をしています。また、葉の特徴も異なり、桜島大根の葉は縮れて濃い色をしています。
桜島大根は火山灰土壌という特殊な環境で育ち、温暖な気候と豊富な日照、良好な排水性を必要とします。このため、主に鹿児島市の桜島周辺という限られた地域でしか栽培されていません。来歴は諸説ありますが、江戸時代から大きな大根として栽培され、1709年の大和本草にも記載があります。地元では島大根(しまでこん)とも呼ばれ、その地域性と文化的価値から「かごしまの伝統野菜」にも選定されています。
味の特徴
桜島大根は、繊維が少なく緻密な肉質で、水分が多く、みずみずしい大根です。一般的な大根より柔らかい食感をしています。また、大根特有の辛みは比較的マイルドで、甘みが強いのが特徴です。
生で食べる場合は、シャキシャキとした歯応えがあり、サラダやツマとして楽しめます。また、柔らかく煮崩れしにくいので煮物にも向いており、だしの味をよく含みます。
旬の時期
桜島大根は8月から9月に種をまき、12月から翌年1〜2月に収穫します。収穫期最盛期は1月中旬から2月上旬で、寒さで甘みが凝縮し、みずみずしさを増す、真冬が旬です。
含まれている主な栄養や効果
一般的な冬大根と同様にビタミンCやアミラーゼなどの成分を多く含む他、近年の研究でトリゴネリンという成分が青首大根の60倍多く含まれていることが分かりました。1日170g程度(おでんの大根2切れ分)の桜島大根を食べることで血管機能の改善効果が期待できるという臨床研究の結果が得られ、注目を集めています。
トリゴネリン
アルカロイドの一種で血管拡張作用がある機能性成分です。血管機能の改善の他、血糖値の改善、基礎代謝の向上などの研究報告があり、脳の老化や生活習慣病の予防効果が期待されている機能性成分です。桜島大根以外では、コーヒー豆に多く含まれています。
ビタミンC
水溶性のビタミンで、皮膚や骨を構成するコラーゲンの合成に必要な栄養素です。また、ストレスに対する抵抗力と免疫力を高める働きがあるとされています。
アミラーゼ(ジアスターゼ)
消化酵素の一種で、でんぷんを分解する働きがあります。消化を助け、胃腸の調子を整える効果が期待できます。熱に弱いため、効率よく利用するには生で食べると良いでしょう。
桜島大根の育て方
平暖地では8月から9月に種まきをして1月から2月に収穫します。家庭菜園で栽培できますが、大きく育てるには、水はけの良い土を選び、深く耕しておくことが肝心です。
畑の準備
種まきの2週間前までに石灰類を散布し、深さ30cmほど耕して土を中和させておきます。元肥は種をまく場所の真下を避けて施します。
種まき
80cm幅の畝にすじまきするか、株間80cmに1カ所5~6粒ずつ点まきをし、種が隠れる程度の土をかけ、たっぷり水を与えます。
間引き・管理
本葉が2~3枚の頃に間引きをして2~3本立ちとし、本葉6~7枚の頃に1本立ちとします。間引きの際に土寄せをし、追肥を与えておくと良く育ちます。
収穫
種まきから約半年後、外側の葉が垂れてきたら収穫時期です。葉の根元を掴んで一気に引き抜いて収穫します。
桜島大根を育てる時に注意したい病害虫と対策
大根などのアブラナ科の野菜は害虫がつきやすいので適切な防除が必要です。ここでは、桜島大根など冬大根の栽培で注意したい代表的な病害虫とその対策を紹介します。
アブラムシ
窒素成分の過多で発生しやすく、日当たり・風通しの悪い環境で増殖し、葉裏や新芽に寄生して汁を吸って作物を加害します。見つけたら水で洗い流す、粘着テープで取り除くなどして除去しましょう。黄色に集まる性質を利用して、黄色の粘着板を設置する方法もあります。
ダイコンシンクイムシ
蛾の一種であるハイダラメイガのことを指します。幼虫が葉の中に入り込んで葉を食害し、生長点(芯)が加害されると生育がストップしてしまいます。種まき直後から防虫ネットをかけて侵入を防ぎ、特に発生量が多い8月9月はこまめに点検するようにしましょう。
べと病
冷涼で多湿な環境で発生しやすく、葉や根に黄色や褐色の斑点ができる病害です。対策としては、密植を避け、畑の排水性を高めておくことがポイント。大根をはじめアブラナ科作物の連作を避けることも一手です。べと病が発生した株は抜き取って畑の外で処分しましょう。
おいしい桜島大根の選び方
なるべく丸みがあり、形が整っているものを選びましょう。皮は白く滑らかで艶のあるものが新鮮で、持ってみてずっしりと重みがあることがみずみずしさの証です。葉付きの場合は、葉が濃い緑色でピンと張っているかでも鮮度を見極めることができます。
桜島大根の保存方法
葉付きのものは葉を切り分け、新聞紙に包んで冷暗所で保存します。葉はすぐにしおれてしまうので、早めに下茹でしておくか、湿らせた新聞紙で包んでビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。
カットした桜島大根は、空気に触れないようにラップでぴったりと包んで、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。
桜島大根の基本的な食べ方とレシピ5選
桜島大根は、そのみずみずしさや辛みの少なさ、煮崩れしにくい特徴を生かして、サラダや漬物、煮物まで幅広く利用されています。大きさの割には繊維が細かく、すりおろしても滑らかな食感になるため大根おろしにも適しています。
ここでは、鹿児島市ホームページの市内農産物を使ったレシピ「桜島大根」から、伝統料理、メイン、サラダ、スープ、デザートの5品を紹介します。
画像・レシピ協力:鹿児島市産業局農林水産部生産流通課
桜島大根でさつま汁
さつま汁は、鶏肉を使った具だくさんの味噌汁で、鹿児島県の郷土料理です。その具材に桜島大根を使って更においしくいただきます。
材料(4人分)
・骨付き鶏のぶつ切り 150g
・桜島大根 200g
・ニンジン 1本
・大豆もやし 50g
・干ししいたけ 3枚
・こんにゃく 1/2枚(100g)
・厚揚げ 1枚(150g)
・だし汁 5カップ(1000ml)
・麦味噌 100g
・刻みねぎ 適量
作り方
1.干ししいたけは水でもどし、細切りにしておく。桜島大根は大きめのサイコロ状に、人参もサイコロ状に、大豆もやしは5センチの長さに切っておく
2.こんにゃくは塩もみをして熱湯で湯がき、サイコロ状に切り、厚揚げも油抜きした後食べやすい大きさに切っておく
3.鍋にだし汁を入れ、桜島大根、人参、干ししいたけ、こんにゃくを入れて火にかけ、沸騰したら鶏肉を入れて、桜島大根がやわらかくなるまで煮る
4.野菜がやわらかくなったら、厚揚げ、大豆もやしを加え、ひと煮立ちしたら味噌を溶き入れる
5.お椀に注ぎ入れて、刻みねぎをちらしたら完成
※好みで、ゆずこしょうや一味唐辛子で食べても良い
桜島大根ステーキ
桜島大根の大きさと肉質の緻密さを生かして豪快に。桜島大根のおいしさを堪能できる一品です。
材料(4人分)
・桜島大根 500g
・キヌサヤ 20本
・サラダ油 大さじ1
・バター 20g
・濃口しょうゆ 大さじ1
・薄口しょうゆ 小さじ1/2
・みりん 大さじ1
作り方
1.桜島大根は2センチほどの厚さに切り、表面に切り込みを入れて20分ほど湯がく
2.付け合わせのキヌサヤも一緒に軽く湯がいておく
3.フライパンにサラダ油を熱し、桜島大根に両面焼き色をつける
4.バターと調味料を加え桜島大根にからめ煮る
5.キヌサヤを加えて出来上がり
桜島大根のおかかマヨサラダ
大根特有の辛みが少ない桜島大根をマヨネーズで更に食べやすく。コリコリとした食感が楽しめる和風サラダです。
材料(4人分)
・桜島大根 200g
・塩 小さじ1/2
・かつお節 5g
・濃口しょうゆ 小さじ1
・マヨネーズ 大さじ2
作り方
1.桜島大根は皮をむき、スライサーで細切りにして塩もみし、15分置く
2.桜島大根をしっかり絞って水気を切る
3.桜島大根をかつお節、濃口しょうゆ、マヨネーズで和える
桜島大根のポタージュ
桜島大根の旨みが詰まった口当たり滑らかなポタージュスープ。豆腐を加えることでクリーミーな仕上がりになります。
材料(4人分)
・桜島大根 200g
・バター 10g
・絹ごし豆腐 1/2丁(150g)
・水 200ml
・豆乳 400ml
・コンソメ 大さじ1
・塩 小さじ1/2
・桜島大根の葉 少々
作り方
1.桜島大根は皮をむいて薄切りにし、葉は下茹でしておく
2.鍋にバターを熱し、桜島大根を炒める。水、豆腐、コンソメを入れて煮込む(10分ほど)
3.2をミキサーにかける。(熱いので注意しながら)
4.鍋に戻して豆乳と塩を加えて沸騰しないように弱火で煮る
5.器に注ぎ入れ、刻んだ桜島大根葉をちらす
桜島大根だんご
材料は桜島大根と白玉粉のみ。桜島大根の生産者のお孫さんが考案したレシピだそうです。
材料(25個分)
・桜島大根180g
・白玉粉 100g
お好みで
・みたらしあん
・きなこ
・のり
・あんこ
作り方
1.桜島大根をすりおろし、白玉粉と練り合わせる
2.手のひらで丸めて真ん中をくぼませたものを沸騰した湯に入れて茹でる
3.浮いてきたら、冷水に取る
4.水気を切ったら出来上がり
※好みで、みたらしあん、きなこ、のり、あんこなどをかける
収穫や料理の体験も楽しい、鹿児島の特産品
桜島大根は、鹿児島市の桜島周辺で火山灰土壌を生かして栽培される伝統野菜です。江戸時代から大きな大根として知られ、明治時代には200ヘクタールもの栽培面積を誇りました。しかし、火山灰の被害や果樹への転換により、1975年には栽培面積が3ヘクタールまで激減。その後、少しずつ回復し、現在は約8ヘクタールで栽培され、「かごしまの伝統野菜」に認定され、地域の重要な特産品として親しまれています。
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桜島を望む桜島大根の畑(写真協力:鹿児島市)
桜島大根は、千枚漬けや切干大根などの加工品が土産物としても人気ですが、青果物としては産地の直売所やスーパー、ネット直販などに流通が限られ、目にする機会が少ないかもしれません。しかし、鹿児島では農業や料理の体験もできる観光資源です。雄大な桜島を仰ぎながら、その大きさや食味を体感し、さまざまな料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。
取材協力:日本伝統野菜推進協会