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サステナブルな作り手と買い手を結ぶ商談会「Neighbors Food Market」取材レポート

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Neighbors Food Marketとは?

Neighbors Food Market(ネイバーズフードマーケット)」は博報堂とFOOD&COMPANYによる、生産者と小売店や飲食店をつなぐBtoBの「食」のマーケットプレイス。作り手の情熱や理想が詰まった自慢の一品を、売り手のみならず消費者とも繋げるサステナブルなコミュニティコマース作りを目指しています。

ただブランドを集め販売機会の場とするのではなく、同じ価値観や親和性の高いこだわりを持った作り手同士が化学反応を起こし、新しい製品やブランド、サービスの創出に期待しています。今回はその最初の一歩を踏み出すための商談会となりました。

オンラインで買い付けができるバイヤー向けサービスは今夏リリースを予定しています。
Neighbors Food MarketオンラインサービスHPはこちら

GOODGOODMEAT 牧草栽培から始める放牧牛専門店


会場入口そばでいい香りを漂わせていたGOOD GOOD MEATのハンバーグ。「自分たちが食べたい、家族に食べさせたい」を基準に放牧牛を中心とした商品開発をしており、九州・北海道の自社牧場では、放牧地の牧草を育てるところから始めるこだわりを見せています。
広々とした放牧地で育った牛の肉を使ったハンバーグはとってもジューシー。使う肉の味わいに合わせ、スパイスの配合も変えているんだとか。

GOOD GOOD MEATは生産・加工・卸売・小売・提供までを一貫経営するサーキュラアグリエコノミー(循環型畜産SPA)を実現。課題の多い畜産業界に向き合うべく、自ら手本となり牽引していく姿は頼もしいです。

取り扱うのは牛や豚だけでなく、近隣で仕留められた鹿も商品化しています。通常、害獣として駆除されたあとは廃棄されてしまう鹿を食肉にすることで、資源の有効活用になります。取引のあるハンターさんのほか、狩猟免許を持つ社員が仕留めた鹿を使っているそうです。
一方で養鹿の取り組みも進めており、住みかと食べ物を管理することで鹿肉の品質が安定するだけでなく、寄生虫のいない鹿を育てられるんだとか。安心して生の鹿肉を食べられる日も遠くないかもしれません。
GOOD GOOD MEATのHPはこちら

QINO SODA 間伐材が生み出すアロマをまとったスパークリングウォーター


杉の間伐材をあしらったブースが特徴的だったのは、企画デザイン会社である株式会社fabriqが手がけるQINOプロジェクトの商品の一つ、QINO SODA(木のソーダ)。
通常廃棄されてしまう間伐材を蒸留し、天然香料として炭酸水に加えることでさわやかな炭酸水ができました。香料を炭酸と合わせることで、泡がはじける際に香りが存分に広がる設計になっています。
黒文字(クロモジ)と杉の2種のバリエーションがあり、それぞれ違った味わいを楽しめます。

クロモジは高級楊枝の原料にもなる高木ですが、林業においては下草として処分されてしまいます。石川県白山市の森の中で育ったクロモジは、県内で蒸留され、地ビール工場でQINO SODAになったあと、県内の福祉施設で梱包・発送されます。石川県で完結したモノづくりを実現しています。
そんな「QINO SODA – 黒文字 – 白山麓」を口に含むと炭酸の細かな泡が広がり、ほんのり甘く森の中にいるようなさわやかな香りが立ちのぼります。ミントなどのハーブとは違う、優しくも力強い木の香りです。

一方で「QINO SODA – 杉- 富士山麓」に使われる杉は、富士山麓で育ち、加工の工程で廃棄されてしまう間伐材です。
こちらはまるでハイボールを飲んでいるかのようなスモーキーな香りが特徴。強めの炭酸と杉のウッディーな香りがマッチしています。ノンアルコールとは思えない満足感は、ダイエットと相性がよさそうです。

開発のきっかけは、広告制作の案件で石川県白山市に行ったことでした。
そこで出会った蒸留会社の人から、植えっぱなしになった杉がもたらす環境の悪循環の話を聞き、問題提起になるような製品を作ろう、ということで生まれたのがQINO SODA。廃棄されてしまう間伐材に新たな価値を与えました。
QINO SODA1本の購入につき10円が新しい森づくりのための活動に充てられます。森の香りを楽しみながら、森づくりを応援できる商品です。

QINOのHPはこちら

山燕庵 こだわりの栽培で、臭わない米ぬかを製品化


減農薬栽培のお米で作った玄米甘酒と、米ぬかを使った製品が並ぶのは株式会社山燕庵(さんえんあん)のブース。
代表の杉原さんはもともとマーケティング企業で働いていましたが、激務で体調を崩したのをきっかけに親元就農、水稲栽培をはじめます。たくさん出るぬかを捨ててしまうのはもったいない!ということで製品化を模索。さまざまな米ぬか製品が生まれました。

玄米甘酒「玄米がユメヲミタ」は、みそ蔵で作る甘酒です。玄米・ぬか特有の嫌な臭いがなく、みそのように深みのある優しい甘さが特徴。そのまま飲むのはもちろん、はちみつや砂糖のように調味料として使ってもおいしいです。

ぬかで作ったカイロ「ぬくぬくのぬか」は、ほんのりお米とハーブが香るやさしいカイロ。電子レンジで温めて繰り返し使えるので、環境にも優しい製品です。

山燕庵の米ぬかは、特有のぬか臭さがないのが特徴。石川県能登半島にある圃場はすり鉢状の盆地にあり、水質が良いことに加え、近隣の圃場の農薬などの影響を受けにくいのが理由なんだとか。
その品質の高さは化粧品メーカーのSHIROも高く評価し、「酒かす米ぬかフェイスマスク」の原料として使用しています。

もったいないから始まった米ぬか活用の取り組みが大きな成功をした、6次産業化の好例です。

山燕庵のHPはこちら

やいづ善八 自社で競り落としたカツオを地元メーカーでカツオ節に


「やいづ善八(ぜんぱち)」は、明治元年創業の老舗だし専門メーカー株式会社マルハチ村松が打ち出すブランドです。枯節と荒節を使い分け、気軽に、しかし本格的なだしを味わえる製品を展開しています。

よくあるだしパックだけではなく、カツオ節や昆布を高圧で抽出することで濃い旨みを感じられる「だしプレッソ」や、調味料を減らすことでカツオ節の食感を活かしたふりかけ「さくさく鰹ふりかけ」など、シンプルだからこそおいしさの伝わる商品が揃っています。
原料がいいからこそ、添加物抜きで味わってもらいたいという作り手の思いが伝わります。

「だしプレッソ 鰹節」「だしプレッソ 昆布」は、通常のだしの取り方では不可能な濃さの旨みと香りを味わうことができます。原料はそれぞれカツオ節、昆布のみで、ストレートに素材の良さを楽しめる一品です。苦味や臭みが全くなく、素材のいいところだけをしっかりと抽出しており、好みの濃さに調節できるのも強みです。

製品に使用するカツオ節は枯節・荒節どちらも地元静岡県焼津港で競り落としたカツオを加工したもの。加工は地元メーカーに依頼することで、カツオ節の加工技術の継承を支援しています。
和食文化の一端を担うカツオ節。加工技術が失われてしまうのは、あまりにもったいないことです。

やいづ善八のHPはこちら

山とりんご 贈答用クオリティのリンゴで作る極上の加工品


15年以上のリンゴの栽培経験から、「もったいない!」という思いで6次化に踏み込んだのは「山とりんご」の園主・平林さん。
贈答用品質のリンゴでも、少し傷がついただけで等級が落ちて出荷できなくなってしまう。そんなリンゴを救済すべく、自家製チップスやストレートジュース、コンフィチュールなどに加工・販売をしています。

「無添加ドライりんごチップス」は、リンゴをスライスして乾燥させたシンプルなもの。山とりんごが栽培する10種類以上のリンゴがランダムに入っているので、品種により違う味わいを楽しめます。軽い食感ながら濃い甘みと香りが感じられ、これはぜひスライスになる前のリンゴも食べたい!と思わせるチップスです。

「紅玉の無添加コンフィチュール」は、プレーン・白ワイン・スパイスの3種類。地元の加工メーカーと開発したオリジナルレシピです。白ワインは知人が運営する地元のワイナリーのものを使用しており、長野の豊かな恵みを感じられます。リンゴのよさを引き立てるためか砂糖は控えめで、上品な甘さのコンフィチュールです。

スタイリッシュなラベルは奥様の知人の手によるもので、つい手に取りたくなる魅力を感じます。店頭に並んだ際に他の商品に埋もれないデザインは、6次化において非常に重要なポイントです。

山とりんごのHPはこちら

こだわりが魅力となり、差別化を産む


今回取材したブランドは、「良いものを作りたい」を突き詰めた結果、品質やコンセプト自体が差別化につながっているように思います。
小さな規模であれば気軽に始められる6次産業化ですが、成功には多大な労力と工夫が必要です。ECサイトの開設やお取り寄せのハードルが下がったため、さまざまなショップの商品の中から選んでもらう必要があります。
味は大前提で、コンセプトやストーリーによる差別化が必要な戦国時代。今回紹介したブランドや製品が6次化成功の一助となれば幸いです。


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