ハダニの生態や特徴とは?
ハダニは日本に約70種類存在し、ダニ科に属するクモの仲間です。成虫は足が8本あり、大きさは約0.5mmです。主に葉の裏に寄生し、高温で乾燥した環境を好みますが、水に弱く、雨が降るとその数が減少します。そのため、雨に当たらない場所に隠れる習性があります。オスとメスが存在しますが、交尾をしなくても増殖可能です。卵で越冬し、環境によっては成虫も越冬します。繁殖が早いため、一気に数が増えることがあります。
ハダニ被害の症状
ハダニは植物に口を突き刺し、汁を吸って餌にします。最初のうちは目立ちませんが、ハダニの数が増えるにつれて、葉に白い斑点のような跡が現れ始めます。葉の色が抜け白くかすれたようになったり、葉が枯れてしまったりすることもあります。
ハダニの発生時期や発生しやすい植物
ハダニは温暖で乾燥した環境を好むため、気温が上がり始める3月から発生し始め、気温が下がる10月ごろまで発生します。
特に梅雨明けくらいから夏、秋と繁殖のピークを迎え、ハダニが好んで発生するナシの農家の中には梅雨の時期は眠れないという人もいるくらいです。
ハダニが発生しやすい植物は、草花、野菜、花き、果樹、庭木、ハーブ類と多岐にわたります。庭木などではあまり被害が拡大することはありませんが、野菜や花き、果樹などではハダニによって作物の商品価値が大きく下がってしまうので、対策が大切です。
ハダニの人体への影響
ハダニは植物の汁が餌なので、人に危害を加えたり、刺したりすることはありません。ですが、ダニの仲間ではあるので、ダニアレルギーの人は注意が必要でしょう。
ハダニの天敵は?
ハダニの天敵には、カメムシ類やアザミウマ類、菌類などがありますが、農業ではカブリダニを使った防除が行われています。
ミヤコカブリダニやチリカブリダニという種類のダニが、植物や環境に悪影響を与えずハダニだけを食べてくれることから、生物農薬・天敵製剤として実際に畑や果樹園などで使われています。
殺虫剤を使わずにハダニを駆除する方法
大量に発生したハダニを一つずつ駆除するのは大変な作業なので、農業の現場では農薬によって駆除されることが多いです。
ただ、家庭菜園や鉢植えなどでは農薬を使わず、手作業でハダニを退治することもできるので、いくつかやり方を紹介します。
植物に水をかける
前述の通り、ハダニは非常に小さく、水にぬれると洗い流されてしまいます。
それを利用し、霧吹きなどで葉の裏に潜むハダニに向けて、直接水を吹きかけるという方法です。
植物全体にハダニが広がっている場合は作業が大変ですが、発生初期の段階であれば十分に対処できるでしょう。
鉢植えを水に浸す
小さい鉢であれば、鉢ごとサッと水に浸して、株全体を洗い流してしまうというやり方もあります。ただし、過湿に弱い植物や、根の張りが弱い株では行ってはいけません。
水で薄めた牛乳を吹きかける
牛乳を2~3倍の水で薄めて、霧吹きで吹きかけるという方法です。
ハダニなどの昆虫は、気門という空気を取り入れる穴を持っています。その穴に付着した牛乳が乾くと膜を張って、気門を塞いで窒息死させてしまうのです。
牛乳を吹きかけたまま放置していると、カビや異臭の原因になるので、翌日にしっかり水で洗ってあげましょう。
なお牛乳の他に、濃いめのコーヒーもカフェイン成分が殺虫殺菌に効くと言われています。
木酢液をかける
水で薄めた木酢液を吹きかけるのも一つの方法です。
木酢液は、木炭を作る際に発生する煙の成分を冷やして作る液体から、さらに不純物を除去し、蒸留したものです。
害虫防除のほか、土壌改良や品質向上にも効果があると言われているので、日ごろから適度に使うのも良いでしょう。
茎・葉を切り落とす
観葉植物の場合、茎や葉を切り落としてしまうのも選択肢の一つです。
切り落とした後は形が乱れますが、しばらくすると新芽が伸びてきます。剪定(せんてい)を兼ねて、ハダニのいる茎や葉を取るのも良いでしょう。
ただ、ハダニが広範囲に広がっている場合はきりがないので、あくまで初期段階の対処の一つとして考えておきましょう。
ハダニの駆除におすすめの殺虫剤・農薬
ここでは、ハダニの防除によく使われる殺虫剤・農薬を紹介します。
ところで、ハダニは薬剤耐性を持ちやすいことから、これまで効果のあった薬剤が効きづらくなっているという話もあります。安易な農薬散布は逆効果になってしまうので、十分に注意して防除を行いましょう。
ベニカグリーンVスプレー
スプレータイプの薬剤で、イチゴ・バラ・カーネーションに発生するハダニに使うことができます。
また、トマトやナス、キュウリといった野菜のアブラムシやうどんこ病対策にも使える薬剤です。
マシン油乳剤(キング95マシン)
マシン油乳剤は、鉱物油などを原料にしたマシン油を乳化させたものです。害虫の気門を物理的に塞いで窒息死させるので、薬剤抵抗性個体が生まれません。
便利な薬剤ですが、果樹などの樹木にしか使えません。また、冬の時期に散布しなくてはなりません。この薬剤は有機栽培でも使用可能です。
ダニ太郎
各種ハダニやサビダニに効果のある薬剤で、水で薄めて噴霧器などで散布します。
使える作物の種類が多く、バラ・カーネーション・イチゴ・スイカ・メロン・キュウリ・ナス・ピーマン・トマト類・里芋・シソ・かんきつ・リンゴ・ナシ・モモ・柿などのハダニ防除に使用可能です。
アーリーセーフ
野菜類やハーブのハダニ、アブラムシ、コナジラミ、うどんこ病の対策に使うことができる薬剤です。
有効成分が天然物、ヤシ油からできているため、有機栽培でも使用可能です。臭いも少なく、収穫前日まで使えます。
カネマイトフロアブル
各種ハダニに効果があり、ミツバチなどの有用昆虫や、カブリダニなどの天敵昆虫に安全性が高い薬剤です。
有効成分がハダニのミトコンドリア内での呼吸を阻害し、死に至らしめます。抵抗性ハダニにも有効です。
ハダニの予防法
ハダニが一気に増える梅雨明け時期は、まだ雨の降る日が多く、手作業での防除や農薬散布のしづらい時期です。この時期にハダニの繁殖を防ぐためには、まずハダニを寄せ付けないこと、予防をすることが何より大切です。
ハダニの予防法はさまざまありますが、ここでは三つの対策を紹介します。
葉のほこりをふき取る
観葉植物や、屋内で育てている作物の場合、葉についたほこりをふき取ると良いでしょう。
ほこりがたまるようなところは風通しが悪く、ハダニが発生しやすい環境です。
1週間に1度は葉のほこりをふき取りましょう。
葉水をこまめに行う
葉水を行って乾燥を防ぐことも予防の一つです。
特に春先や秋ごろなどの乾燥しやすい時期は、霧吹きなどで毎日吹きかけると良いでしょう。
なお、葉水は通常の水やりと異なるので、水やりを忘れないように注意しましょう。
風通しのよいところで育てる
風通しが悪い場所では、ハダニをはじめとした各種害虫や病気が発生しやすくなります。植物を育てる際は、風通しが良いところに置くか、株や鉢植え同士の間隔をあける、茂りすぎた茎葉を剪定して形を整えるなど、手入れを忘れずに行うことが大切です。
屋内の場合はサーキュレーターなどを使っても良いでしょう。
小さいハダニでも油断大敵!
いつの間にか発生し、気づいた頃には葉の裏にびっしりと繁殖しているハダニ。人間に害はありませんが、野菜や果樹にとっては油断ならない大敵です。
発生初期の段階であれば、水をかけたり、牛乳や木酢液をかけたりと、手作業でも防除ができますが、全体に広がってしまうと農薬を使っても防除するのが大変です。
普段からこまめに観察し、予防を心がけましょう。またハダニを見つけたら早め早めに対処することが大切です。
本記事を参考にして、ハダニの予防や防除を実践してみてください。